小走りな日常
本のこと

樋口 有介様

好きな作家さんが亡くなって。

初めて、「好きな作家の新しい作品が読めなくなる」という立場になった。

どんなに次回作を願っても、「次」はやってこない。あのシリーズの続編を、と願ってみても、もう続編はない。

ただ漠然と、部屋の本棚を眺める。そしてやはり思う。

次の作品、読みたかったな。準備しておられたのかな。

あぁ、読みたかったな。

本棚にある本を引っ張り読み返す。すぐにその世界に引き込まれる、この瞬間がすきだ。ぐっと腕を掴まれて、引っ張られるような感覚。

その日の疲れや、言葉に出来ない日常のモヤモヤをどこか遠くに放り投げて、私は本の世界に入り込む。

ずっと、そうやって私は助けられてきた。こうやって現実から離れることが出来た。

様々なところで、助けてくれてありがとうございました。

楽しませてくれてありがとうございました。

待ち望んでいた次回作は、心の中で想像させてください。

読者になれて、よかったです。

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